旅程管理主任者と添乗員手配|法定要件と実務の押さえどころ
旅程管理主任者と添乗員手配|法定要件と実務の押さえどころ
添乗員手配で法令違反やコスト超過が起きる典型的な原因は、人手不足ではなく、性質の違う3つを「添乗員」という一語で発注していることです。 この3つは根拠法も資格の要否もコスト構造も別物です。添乗員は職種名であって資格名ではありません。旅行業法が資格を要求しているのは「旅程管理業務を行う者のうち主任の者」(法第12条の11)であり、法律上「旅程管理主任者」という名称の免許や登録制度があるわけではありません。通訳ガイドは通訳案内士法の領域で、2018年1月4日施行の改正により業務独占は廃止され、現在は名称独占のみです(名称の詐称には30万円以下の罰金が定められています)。手配前に4点を確定させてください。①その旅行の企画旅行としての実施主体は誰か(日本側の旅行業者か、海外の旅行会社か)、②旅程管理業務を行う者を同行させるのか、法令上認められた代替手段で措置を講じるのか、③国内のみか海外を含むか(必要な研修区分も実務経験の要件も変わります)、④雇用・派遣・業務委託のどれで人を確保するのか(現場で直接指示を出せるかどうかが変わります)。
本記事は法令の一般的な整理であり、個別案件の適法性を保証するものではありません。 特に①旅行業法上の義務の主体、②労働者派遣と業務委託の切り分け、③労働時間制度の適用可否は、契約形態と実際の運用実態によって結論が変わります。条文・告示・施行要領は改正されるため、発注・制度設計の前に必ず観光庁および登録先都道府県の一次情報、ならびに社会保険労務士・弁護士に確認してください。
添乗員確保の4類型+補完策:何が担保され、何が制約になるか
| 類型 | 担保される内容 | 現場で直接指示できるか | コストを動かす要因 | 主な法的制約 | 適する場面 |
|---|---|---|---|---|---|
| ①自社雇用の添乗員 | 品質・教育・資格取得を自社で統制できる | できる | 固定人件費(繁閑に関わらず発生) | 労働時間の実態管理と割増賃金 | 通年で一定量の催行がある、品質が競争力の中核 |
| ②派遣会社からの添乗員派遣 | 有資格者を必要な日数だけ確保できる | できる(派遣なので指揮命令可) | 繁忙期の需給、研修区分、拘束時間 | 個人単位3年の期間制限(適用除外あり)・派遣元は許可制 | 繁閑差が大きい、スポット案件、資格者の即時確保 |
| ③添乗業務の業務委託(請負) | 業務の成果を外部に委ねる | できない(直接指示は偽装請負に評価されうる) | 委託単価、業務範囲の切り分け | 昭和61年労働省告示第37号による実態判断 | 業務範囲が明確に切り出せる場合に限る |
| ④スルーガイド等が旅程管理を兼務 | 案内と行程管理を1人に集約でき、人数を圧縮できる | 契約形態による | ガイドの言語別需給、繁忙期 | 兼務自体に制約はないが、そのガイドを手配する行為が手配業登録の対象になりうる | 訪日インバウンドの中小団体・FIT |
| 補完策:添乗員を同行させない設計 | 現地手配業者への委託や常時連絡可能な窓口で措置を講じる | ― | 窓口の運用コスト、現地委託費 | 免除は「本邦内の旅行」+ 事前説明 + 権利表示書面の交付が要件 | 行程が単純、集合解散型、コスト圧縮が最優先 |
※②と③の差は「誰が指示を出すか」です。 ここを曖昧にしたまま、業務委託契約の外部添乗員に現場で直接指示を出すと、実態としては労働者派遣と評価されうる領域に入ります。判断枠組みは「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号)です。契約書の表題ではなく運用実態で判断されるため、「委託契約なのに当日は自社の運行管理者が細かく指示している」という運用は、契約形態そのものを見直してください。
※④は訪日インバウンドで最も多い形です。 ガイドに旅程管理を兼務させること自体を禁じる規定はありません。ただし後述のとおり、全国通訳案内士・地域通訳案内士以外の有償ガイドを旅行業者のために本邦内で手配する行為は、旅行サービス手配業の登録対象です。登録要否を決めるのは「兼務させるかどうか」ではなく、誰のために・どこで・どの資格のガイドを・代理媒介取次のどの形で手配するかです。
※補完策は「手抜き」ではなく、法令が明示的に用意した選択肢です。 ただし後述のとおり免除には要件があり、免除の対象にならない措置も残ります。 「誰も同行しないので何もしない」は成立しません。
「添乗員」「主任の者」「通訳ガイド」は何がどう違うのか?
3つを混ぜたまま発注すると、資格不足か過剰コストのどちらかになります。
- 添乗員 = 職種名。資格名ではありません。 旅行に同行して行程を管理し、手配内容の履行を確認し、変更時に代替手配を行う人を指す一般的な呼称です。「添乗員資格」という資格は存在しません。 発注書に「添乗員資格保有者」と書いても要件は伝わりません。必要なのは国内区分か総合区分か、そもそも有資格者を主任として置く必要があるのかを明示してください。
- 「主任の者」= 旅行業法が資格を求める対象。 旅行業法は、企画旅行を実施する旅行業者に対し、運送等サービスの確実な提供や、変更が必要になった場合の代替サービスの手配など、企画旅行の円滑な実施を確保するための措置を講じることを求めています(第12条の10)。そのうえで、旅程管理業務を行う者のうち主任の者は、一定の要件を満たす者から選任しなければならないとされています(第12条の11)。業界では「旅程管理主任者」と呼びますが、これは法律上の資格名称ではなく、旅行業務取扱管理者のような国家試験・登録制度も存在しません。 実体は「登録研修機関の研修修了(修了試験合格)+所定の実務経験」を満たしていることです。
- 通訳ガイド = 通訳案内士法の領域。 2018年1月4日施行の改正通訳案内士法により、通訳案内業務の業務独占は廃止されました。従来の通訳案内士は「全国通訳案内士」となり、現在は名称独占の規制です(全国通訳案内士・地域通訳案内士でない者が類似名称を用いることは禁止され、違反には30万円以下の罰金が定められています)。無資格者が有償で通訳案内を行うこと自体は違法ではありません。
訪日インバウンドで実務上いちばん問題になるのが、この3つ目の周辺です。 海外の送客元から「ガイドを1人つけてほしい」と言われたとき、その人に案内だけを求めているのか、行程管理・変更対応・精算まで求めているのかで、必要な人材も単価も変わります。見積前に業務範囲を文章で確定させてください。 口頭の「ガイド1名」は、当日に「なぜ列車の振替をやってくれないのか」という形で跳ね返ってきます。
あわせて、旅行サービス手配業(ランドオペレーター)の登録範囲を正確に押さえてください。 登録が必要になるのは、旅行業を営む者(外国の法令に準拠して外国において旅行業を営む者を含む)のために、本邦内において、次のサービスの提供者との間で代理して契約を締結し、媒介をし、又は取次ぎをする行為とされています。①運送または宿泊のサービス、②全国通訳案内士・地域通訳案内士以外の者による有償の通訳案内、③輸出物品販売場(消費税免税店)における物品販売。
ここから2つの実務的帰結が出ます。 ひとつは、「旅行業を営む者のため」「本邦内において」という限定を落とさないこと。 旅行者本人のために手配すれば手配業ではなく旅行業の問題になり、海外分の手配は登録対象外です。もうひとつは、添乗員そのものの手配は、上記の列挙に含まれていないこと。 添乗員手配に働く規制は旅行業法ではなく、主として労働者派遣法の側です。ここを取り違えて「添乗員を手配しているから手配業登録が要る/要らない」と判断しないでください。(登録要否の最終判断は、必ず登録先の都道府県または観光庁に照会してください。)
旅程管理研修の資格要件はどうなっているのか?
要件は受講資格・修了試験・実務経験の3層です。ここを1層でも落とすと育成計画が崩れます。
第1に、研修には受講資格の制限があります。 誰でも受けられるわけではありません。施行要領では、受講対象を現に旅行業者等の役員または使用人である者、現に旅行業者に選任され旅程管理業務を反復継続して行っている者、これらになることが予定され旅行業務の基礎的知識を有すると認められる者、そして全国通訳案内士または地域通訳案内士の資格を有する者といった範囲に限定する整理が示されています。
この最後の一項が、訪日インバウンドでは重要です。 全国通訳案内士・地域通訳案内士は、旅行会社に所属していなくても受講対象に含まれます。比較表④の「スルーガイドが旅程管理を兼務する」体制を作るとき、有資格ガイドは研修に進める最短経路にいます。 外部から未経験者を採用して研修に放り込む前に、取引のあるガイドに研修受講を働きかけるほうが、実務上は速いことが多いです。
第2に、研修は「出席すれば修了」ではありません。修了試験の合格が法定の要件です。 規則は、登録研修機関に対し、観光庁長官の告示に従って修了試験を行い、合格した者に修了証明書を交付することを求めています。独立した国家試験こそありませんが、「研修に出れば取れる」という前提で人員計画を組まないでください。
第3に、研修時間と区分です。法定の単位は日数ではなく時間で、告示の別表では、旅行業法・約款に関する科目、国内の旅程管理業務に関する科目、海外の旅程管理業務に関する科目がそれぞれ時間数で定められています。国内区分はおおむね16時間以上、総合区分はおおむね24時間以上が目安になります。集合研修では国内2日・総合3日程度で実施されてきましたが、大手の登録研修機関ではオンデマンド動画受講とCBT方式の修了テストへの移行が進んでおり、「◯日間」という単位は実態を表さなくなりつつあります。 日程・方式は必ず実施機関の最新案内で確認してください。なお総合の科目では本邦外の旅程管理業務に必要な語学に関する能力が問われますが、これは必ずしも英語に限定されません。 また、国内研修の課程を修了した者が総合研修を受講する場合、申請により重複する課程の省略が認められる扱いがあり、国内から総合へのステップアップコストは新規受講より小さくなります。
第4に、実務経験要件です。ここが採用計画上いちばん見落とされます。 研修を修了しただけでは要件を満たしません。旅程管理研修修了日の前後1年以内に1回以上、または修了日から3年以内に2回以上の旅程管理業務の実務経験が求められます。積み方には次の特徴があります。
- 有資格者の指導による研修ツアーには、目的地の地域制限がかかります。 規則上、有資格者の指導による実務研修を受けた経験は、その研修を受けた地域を目的地とする旅行に係る経験とみなされる扱いです。北海道の研修ツアーで積んだ経験が、そのまま九州行程の要件を満たすとは限りません。
- 企画旅行の添乗だけが経路ではありません。 施行要領では、団体の手配旅行に添乗し、規則第32条に掲げるような業務に従事した経験も実務経験に含むと整理されています。自社で企画旅行の催行数が少ない会社でも、経験を積ませる余地があります。
- 総合区分を目指すなら、実務経験そのものが海外添乗でなければなりません。 規則は、本邦外の企画旅行に同行する者については、本邦外の旅行に関する旅程管理業務に限るとしています。国内添乗を何回積んでも総合区分の要件は満たしません。 訪日インバウンド専業でアウトバウンドの催行機会がない会社にとって、これは社内育成が事実上成り立たないことを意味します。
したがって、育成計画上のボトルネックは研修ではなく実務経験です。 研修そのものは通年受講が可能になりつつある一方、実務経験の機会(特に海外添乗)は自社の催行実績に縛られます。 繁忙期の人員は育成ではなく手配(雇用・派遣)で埋め、育成は「実務機会をどう作るか」から逆算して年単位で置いてください。
訪日インバウンドで添乗員は必ず同行させなければならないのか?
同行は絶対の要件ではありません。ただし免除には法令上の要件があり、免除されない措置も残ります。 ここを混同して「窓口を作れば添乗員は不要」と読むと、要件を満たさないまま催行することになります。
法が求めているのは、企画旅行の円滑な実施を確保するための「措置」であって、「添乗員を同行させること」そのものではありません。行政の運用でも、旅程管理のための措置は必ずしも添乗員がすべて行う必要はなく、旅行地の旅行業者へ委託する、常時連絡可能な窓口を設けるなど、他の方法によって必要な措置を講じることができるのであれば差し支えないという整理が示されています。
そのうえで、法令上の免除は無条件ではありません。 規則第32条は旅程管理のための措置を列挙していますが、サービスの提供を受けるために必要な手続の実施と、変更時の代替サービスの手配については、①本邦内の旅行であり、②契約締結の前に旅行者にこれらの措置を講じない旨を説明し、③当該旅行に関する計画に定めるサービスの提供を受ける権利を表示した書面(乗車船券・宿泊券等)を交付した場合に免除される、という構造になっています。訪日インバウンドの国内行程はこの「本邦内の旅行」に該当しうるため、実務上使える設計です。 ただし、2人以上が同一の日程で行動する区間について、集合時刻・集合場所その他の指示を行う措置には、この免除が用意されていません。(条文の号数と最新の文言は必ず一次情報で確認してください。)
法令要件を満たしたうえで、運用として次の3点を自分で潰してください。これらは法的要件ではなく、事故を防ぐための実務条件です。
- 代替手段が実際に機能すること。 「緊急連絡先を記載した」だけでは足りません。その番号が催行時間帯に確実につながり、対応言語が旅行者の言語をカバーし、現地手配業者への指示まで到達する必要があります。訪日案件では、深夜・早朝の到着便と多言語対応がここで詰みます。
- 旅行者が自力で行動できる情報が届いていること。 集合・解散の時刻と場所、変更時の連絡方法など、同行者がいない前提の情報設計が要ります。
- 判断が必要な事態への到達時間が現実的であること。 遅延・欠航・急病の発生から、窓口が判断して現地に手を打つまでの所要時間が、そのまま旅行者の待機時間になります。行程が地方分散型・二次交通依存型であるほど、非同行の設計は難しくなります。
もうひとつ、複数名で添乗させる場合に見落とされる論点があります。 施行要領では、「主任の者」とは複数の添乗員がいる場合の統括管理者を指し、有資格者の統括管理に属さない添乗員がいる場合は、その者も有資格である必要があると整理されています。つまり「主任が1人いれば残りは無資格でよい」は、全員が主任の統括管理下にある場合に限った話です。 大型団体をバス別・コース別に分割し、補助添乗員が独立して別行程を回す運用では、その補助者自身に資格が必要になります。 訪日の分乗・地方分散型行程で頻出する形なので、行程を分けた時点で有資格者の必要数を数え直してください。
最後に、義務の主体を確認してください。 法第12条の10・第12条の11の義務は、企画旅行を実施する旅行業者に課されます。したがって、海外の旅行会社が自国で企画・募集した旅行について、日本側が地上手配のみを担っている場合、日本側のランドオペレーターにこれらの義務は直接生じません。 一方、日本の旅行業者自身が募集型・受注型の企画旅行として実施しているなら、義務は自社にかかります。 危険なのは、「いつもの海外エージェント案件と同じつもりで受けたら、実態は自社が企画旅行を実施していた」というケースです。契約書上の当事者と、旅行者に対して誰が旅行契約の相手方になっているかを確認し、判断がつかない場合は登録先の都道府県または観光庁に照会してください。
添乗員の労働時間は「みなし8時間」で計算できるのか?
事業場外みなし労働時間制を前提に日当を組む設計は、添乗業務では危険です。ただし「添乗業務は一律にみなし制不可」という理解も正確ではありません。
阪急トラベルサポート事件(最高裁第二小法廷 平成26年1月24日判決、平成24年(受)第1475号)は、海外の募集型企画旅行の添乗業務について、労働基準法38条の2第1項の「労働時間を算定し難いとき」に当たるとはいえないと判断しました。判決が重視したのは、おおむね次の点です。
- 業務内容があらかじめ具体的に確定している(旅行日程が事前に決まっている)
- 添乗員が自ら決定できる事項の範囲と、その選択の幅が限られている
- 会社が、あらかじめ定められた旅行日程に沿った旅程管理等を行うべきことを具体的に指示している
- 国際電話用の携帯電話を貸与し、常時電源を入れておくよう指示していた(業務中の連絡可能性が確保されていた)
- 旅行日程の終了後、添乗日報によって詳細な報告を受けている
この判決は事例判断です。 判示は「これらの事実関係の下では『労働時間を算定し難いとき』に当たらない」というもので、添乗業務一般についてみなし制を禁じたものではありません。 とはいえ実務への含意は明快です。 行程表で業務を確定させ、携帯電話で常時連絡が取れ、日報で詳細報告を取っている運用は、まさに「労働時間を算定できる」根拠として機能します。 皮肉ですが、旅程管理の品質を上げるための管理そのものが、みなし制の適用を否定する方向に働きます。 逆に言えば、「みなし制を維持したいから連絡を取らない・報告を取らない」は、旅程管理の品質を捨てる選択です。どちらを取るかを意識的に決めてください。
なお、事業場外みなし労働時間制の判断枠組みについては、その後も最高裁の判断が出ています。協同組合グローブ事件(最高裁第三小法廷 令和6年4月16日判決)は、みなし制の適用を否定した原審の判断を破棄して差し戻しました。判断にあたっては、業務の性質・内容・遂行の態様等と、指示および報告の方法・内容・実施の態様等を検討すべきとされています。この判決の向きは、使用者側にみなし制適用の余地を残すものであり、「みなし制は使えなくなる一方だ」という理解は正確ではありません。 ただし添乗業務について結論が変わったわけでもありません。 自社の運用が上記の要素にどう当てはまるかは個別判断になるため、適用している労働時間制度は社会保険労務士に定期的に点検させてください。
実務としては、添乗員のコストは日当ではなく拘束時間で設計してください。 具体的には3点です。
- 早朝の空港ピックアップと深夜の到着便対応を日当に吸収させない。 訪日案件では到着便の時刻が実労働時間を直接押し上げます。便の時刻が確定した段階でコストを再計算する運用にしてください。
- 移動日・待機時間の扱いを契約前に決める。 「待機は労働時間か」は現場で必ず揉めます。発注書の段階で拘束開始・終了時刻を明記してください。
- 連泊行程の日をどう数えるかを決める。 地方周遊の連泊案件は、日当ベースの見積と実際の拘束時間の乖離が最も大きくなる領域です。
派遣と業務委託、どちらで手配すべきか?
繁閑差の大きい添乗員は外部調達が基本になりますが、派遣と業務委託の選択は、単価ではなく「現場で指示を出すかどうか」で決まります。
派遣を選ぶ場合、まず派遣元の許可を確認してください。 2015年の労働者派遣法改正で特定労働者派遣事業が廃止され、労働者派遣事業はすべて許可制になりました。発注時に許可番号を確認するのが実務の第一歩です。
期間制限も押さえてください。 かつて添乗業務は、期間制限の適用外とされていた専門26業務の一つ(旅行における添乗員の行う旅程管理業務)でした。2015年改正で26業務という区分は廃止され、原則として3年の期間制限が適用される整理になっています。制限には事業所単位と個人単位があり、事業所単位は過半数労働組合等への意見聴取により3年ごとに延長が可能である一方、個人単位(同一の組織単位で3年)は延長できません。 つまり実質的なハードキャップは個人単位のほうです。
ただし、期間制限には適用除外があります。 派遣元で無期雇用されている派遣労働者、60歳以上の派遣労働者、有期プロジェクト業務、日数限定業務、産前産後休業・育児休業等の代替業務などは対象外です。添乗員派遣では無期雇用型が現に存在するため、「同じ添乗員が5年来ている」がそのまま違法を意味するわけではありません。 心配な場合は、その添乗員が無期雇用派遣かどうかを派遣元に確認するのが最短の確認手順です。(制度は改正が重なっているため、詳細は厚生労働省の資料または派遣元に確認してください。)
業務委託(請負)を選ぶ場合、現場で直接指示を出せません。 ここが実務でいちばん破られます。添乗業務は性質上、当日の変更対応で本部から細かい指示を出したくなる業務です。しかし業務委託の形をとりながら実態として指揮命令を行えば、契約書の表題にかかわらず労働者派遣と評価されうる領域に入ります。判断基準は昭和61年労働省告示第37号にあり、業務遂行に関する指示その他の管理を自ら行っているか、労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行っているかといった観点で整理されています。「請負にして安く上げつつ、当日は自社の判断で動かす」は、コスト削減ではなくリスクの繰り延べです。
判断は次の順序で行ってください。
- 当日、自社が添乗員に直接指示を出す必要があるか。 出す必要があるなら、雇用か派遣しか選択肢はありません。ここで「業務委託でも実際にはできている」と考えるのをやめてください。
- 有資格者を何名置く必要があるか。 主任として選任する者に加え、行程を分割して独立に回す添乗員がいるなら、その人数分の有資格者が必要です。あわせて国内区分か総合区分かを発注時に明示します。
- 拘束時間はどこからどこまでか。 前泊・後泊、空港送迎、深夜早朝便の対応を含めて、発注書で開始・終了時刻を確定させます。
- 繁忙期の確保をいつ動かすか。 資格者の需給は繁忙期に逼迫します。行程確定を待たず、稼働枠だけ先に押さえるのが実務です。
品質の測り方は3つで足ります。 ①行程変更発生時の一次対応所要時間(変更事由の発生から旅行者への案内までの分数)、②添乗日報の当日提出率、③同一添乗員のリピート指名率。①を測っていない会社は、添乗員の良し悪しをクレームの有無でしか判断できていません。 変更対応の速さが、添乗員を同行させることの価値そのものです。
FAQ
Q. 添乗員には必ず資格が必要ですか? 同行者全員には不要ですが、条件があります。資格が求められるのは主任の者で、無資格の補助添乗員が認められるのは主任の統括管理下にある場合です。行程を分けて独立に回すなら、その者にも資格が必要です。
Q. 国内区分と総合区分、どちらを取らせるべきですか? 訪日インバウンド専業なら国内区分で足りる場面が多く、海外区間を含む行程を扱うなら総合区分が必要です。ただし総合は実務経験自体が海外添乗でなければならず、催行機会のない会社では社内育成が困難です。
Q. 添乗員を同行させずに催行できますか? 可能な場合があります。手続の実施と代替手配の措置は、本邦内の旅行であること、契約前に措置を講じない旨を説明すること、権利を表示した書面を交付することを満たせば免除されます。集合時刻・場所の指示には免除がありません。
Q. 添乗員の日当を「みなし8時間」で組んでよいですか? 慎重に判断してください。阪急トラベルサポート事件(最高裁 平成26年1月24日)は、行程の事前確定・携帯電話での常時連絡・日報報告があった事案でみなし制の適用を否定しました。事例判断ですが、同様の管理をしているなら日当設計は危険です。
Q. 添乗員を長年同じ派遣で受け入れていますが問題ありますか? 確認が必要ですが、直ちに違法とは限りません。個人単位3年の制限には、派遣元で無期雇用されている場合など適用除外があります。その添乗員が無期雇用派遣かどうかを派遣元に確認するのが最短の手順です。
Last updated: 2026-08-11