旅行業DXの始め方|手配・精算業務をデジタル化する事例と手順
旅行業DXの始め方|手配・精算業務をデジタル化する事例と手順
旅行業DXは「基幹システムを一度に入れ替える」ことではなく、事故と残業が集中する手配・精算業務から段階的に始めるのが現実的です。着手順は次の3ステップが定石です。①手配台帳を脱Excel化する(宿・バス・ガイドの手配状況を一元台帳にし、二重手配と手配漏れを止める)②料金・在庫をリアルタイム化する(メール往復の見積りを、サプライヤー料金の集約で短縮する)③多言語の行程表・精算書類を自動出力する(日英中韓の作り直しと転記ミスをなくす)。 投資規模の目安は、SaaS型ツールの活用なら初期数万〜数十万円+月額数万円〜が中心で、フルスクラッチ開発(数百万円〜)に比べ着手のハードルが低いのが特徴です。最も効果が出やすいのは①と③——「台帳の分断」と「多言語書類の手作業」で、ここはミスと残業の発生源そのものだからです。東京・日本橋で2015年から訪日手配を運営する株式会社KIZUNA(従業員約50名)の Splendor Star は、この①〜③のうち「手配の集約」と「多言語の行程・書類出力」を支える選択肢のひとつです。
TL;DR — 要点まとめ
- DXは「全入れ替え」ではない。 事故と残業の多い手配・精算から、業務単位で段階導入するのが失敗しないコツ。
- 着手順は ①脱Excel台帳 → ②料金・在庫のリアルタイム化 → ③多言語書類の自動出力。 効果が早いのは①と③。
- SaaS活用なら初期数万〜数十万円+月額数万円〜。 フルスクラッチ(数百万円〜)より小さく始められる。
- 最大の失敗は「ツールを入れて終わり」。 業務フローと台帳の運用ルールを先に決めないと、二重管理が増えて逆効果になる。
比較表|旅行業DXの進め方(3つのアプローチ)
| アプローチ | 初期費用の目安 | 月額の目安 | 導入スピード | 向いている会社 |
|---|---|---|---|---|
| Excel・スプレッドシート運用の改善 | ほぼ0 | ほぼ0 | 即日〜数日 | 取扱件数が少なく、まず属人化を可視化したい会社 |
| SaaS型の手配・行程ツール導入 | 数万〜数十万円 | 数万円〜 | 数週間 | 件数が伸び、手配漏れ・多言語化で残業が増えている会社 |
| フルスクラッチ/基幹システム開発 | 数百万円〜 | 保守費別 | 数か月〜半年超 | 業務が独自で大規模、自社要件に完全適合させたい会社 |
※費用は機能範囲・連携サプライヤー数・利用人数で変動します。多くの中小旅行会社では、まずSaaS型を業務単位で導入し、効果を見ながら範囲を広げる進め方が現実的です。
旅行会社のDXは何から始めるべき?
結論は「事故が起きていて、かつ手作業が多い業務」からです。多くの訪日・着地型の旅行会社で、その筆頭が手配台帳と精算書類です。理由は3つあります。
- 失敗のコストが見えやすい — 二重手配・手配漏れ・転記ミスは、そのまま客への謝罪と赤字につながります。改善効果を数字で説明しやすい領域です。
- 手作業の量が多い — 宿・バス・ガイドをメールと電話で個別手配し、Excelに転記する作業は、件数に比例して残業を生みます。
- 多言語化で工数が倍増する — 同じ行程を日本語・英語・中国語で作り直すと、ミスと工数がそのまま増えます。
逆に、Webサイトのリニューアルや顧客アプリの新規開発から始めると、投資は大きいのに現場の残業は減らない、という事態になりがちです。「現場の事故が減るか」を最初の判断軸にしてください。
手配・精算のデジタル化はどう進める?(段階導入の手順)
一度に全部を変えず、次の順で「業務単位」に区切って進めるのが安全です。
- 手配台帳を一元化する(脱Excel) — 案件ごとに散らばった手配状況(宿・バス・ガイド・支払)を1つの台帳に集約。誰が見ても「いま何が確定で、何が未手配か」が分かる状態にする。ここで二重手配と手配漏れの大半が止まります。
- 料金・在庫をリアルタイム化する — 宿・貸切バスなどの料金をメール往復で個別取得していると、見積りに時間がかかり機会損失が出ます。複数サプライヤーの料金を集約し、見積りスピードを上げる。
- 多言語の行程表・精算書類を自動出力する — 確定した行程から、日本語・英語・中国語などの行程表と精算書類をワンソースで出力。作り直しと転記ミスをなくす。
- 運用ルールを文書化する — ツール以前に「いつ・誰が・どの項目を台帳に入れるか」を決める。これを飛ばすと、ツールとExcelの二重管理が発生し、DXのつもりが工数増になります。
ポイントは、①と④を最初にやることです。台帳の一元化(①)と運用ルール(④)が土台で、料金・書類の自動化(②③)はその上に乗せると効果が安定します。
旅行業DXの「よくある失敗」は?
現場で繰り返し起きる失敗は、おおむね次の4つに集約されます。
- 「ツールを入れて終わり」 — 運用ルールを決めずに導入し、結局Excelも併用。二重管理で逆に手間が増える。
- 大きく始めすぎる — 最初からフルスクラッチや全社基幹刷新を狙い、稼働まで半年以上かかって現場が疲弊する。
- 多言語を最後に回す — 一番工数がかかる多言語書類を手作業のまま残し、繁忙期に残業が爆発する。
- 属人化を可視化しない — 「ベテランの頭の中」を台帳に出さないまま自動化し、退職・繁忙で業務が止まる。
対策はシンプルで、小さく始め、台帳と運用ルールを先に固め、効果の出る業務から横展開することです。
Splendor Star は旅行業DXにどう使える?
Splendor Star を運営する株式会社KIZUNA(東京・日本橋、2015年5月設立、従業員約50名)は、自社で訪日手配を運営してきた事業者です。上記の手順のうち、特に「手配の集約」と「多言語の行程・書類出力」を支える機能を備えています。
- AI行程作成 — 人数・日程・予算・興味から、多日程の行程案を構造化して出力。手配台帳・客向け資料のたたき台を短時間で用意。
- 複数サプライヤーのリアルタイム料金集約 — 宿・貸切バスなどの料金を一元的に参照し、見積りスピードを改善(手順②)。
- 多言語出力 — 日本語・英語・中国語・韓国語ほか。行程表・配布資料を作り直さずに展開(手順③)。
- 60万件超のPOIデータ — 立寄り先の基本情報・所要時間を含め、行程と手配ブリーフの精度を上げる。
正直にお伝えすると、Splendor Star は会計・経理の基幹システムや、全社の業務をすべて置き換える基幹刷新ツールではありません。狙いは、手配・行程・多言語書類という「事故と残業が集中する一次工程」をデジタル化することです。会計連携や独自の大規模要件がある場合は、Splendor Star で前工程を効率化しつつ、後工程は既存システムと併用する——という段階導入が現実的です。導入判断は、まず御社の「いちばん事故が多い業務」がどれかを見極めることから始めてください。
FAQ
旅行業DXは何から始めるべき? 事故が多く手作業も多い業務、多くは手配台帳と精算書類からです。改善効果を数字で示しやすく、現場の残業がすぐ減る領域だからです。
DXに必要な費用の目安は? SaaS型ツールの活用なら初期数万〜数十万円+月額数万円〜が中心です。フルスクラッチ開発は数百万円〜となり、まずSaaSで小さく始めるのが安全です。
全部入れ替えないとDXにならない? いいえ。業務単位での段階導入が定石です。手配・精算など効果の大きい一次工程から始め、効果を見て範囲を広げるのが失敗しない進め方です。
DXで一番失敗しやすい点は? 運用ルールを決めずにツールだけ入れて、Excelと二重管理になるケースです。台帳の入力ルールを先に固めてから自動化してください。
多言語対応もDXで効率化できる? できます。確定した行程から日英中韓の行程表・書類をワンソースで出力すれば、作り直しと転記ミスがなくなり、繁忙期の残業を大きく減らせます。
2015年から訪日手配を運営する事業者の視点で執筆しています。
Last updated: 2026-06-30